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不登校は『制度公害』(8) 就学義務のない国デンマーク

就学義務のない国デンマーク


 デンマークに住んだことのある人に話を聞いた。デンマークでは、保護者、住民に「教育は自分たちのもの」という意識が定着している。不登校問題のようなものはないそうである。

デンマークの教育制度は、たいへんに柔軟で、いかようにも教育が生まれるようになっている。

親が公立学校に満足できない場合もある。そういう人たちのためには、私学がいろいろとある。自由主義系、各種宗教系、シュタィナー教育、学力系などさまざまある。親たちのさまざまな教育観に応じて、できていったのである。私学には運営費の七五%の補助金が出ている。だから、富裕な家庭でなくても、子どもを私学に通わせることができる。生徒の一二%が私学に行っている。

親が自分たちで学校を作ってしまう道もある。学校を作ること自体はまったく自由である。学校を作りたい親たちが教育省に相談すると、教育省は「こうすればいいんですよ」というマニュアルをくれて、なにかと面倒を見てくれる。学校を作ることに許可は必要ない。その上、ごく緩い基準を満たしていれば補助金をもらうこともできる。敷地や校舎はなんでもいいし、親が自分たちで先生をやってもかまわない。

気にいった学校がなければ、家庭で子どもを育てることもできる。それは法的に保護されている。

ところがおもしろいことに、デンマークでは、家庭で子どもを育てる人の数は、統計の数字にも表れないほど少ない。学校に行かない自由があるからこそ、子どもが来たくなるような学校ができていくのである。

高等教育も、大学まで無償である。

デンマークでは、一八世紀前半に、グルントヴィという"国父"とも言うべき人物が現れて、一国の文化に大きな影響を与えた。グルントヴィは、民衆教育の父とも言われ、「義務教育は怠惰と無関心を生む」「親の教育権を国家に侵されてはいけない」というような主張をした。グルントヴィの教育思想に呼応して、フリースコーレと呼ぼれる暗記や訓練によらない自由な学校を作る運動が起こり、現在にいたるまで一世紀半の歴史を持っている。このフリースコーレの運動が、公立学校にも大きな影響を与えている。

現在でも、デンマークの教育では、競争をさせず、点数評価に重きを置かない教育哲学が広まっている。=二歳までは、点数の試験を課してはいけないという法律すらある。ところが、国際的な学力調査をやると、デンマークは先進国の平均的なレベルにあるし、成人の学力となるとさらに高い。

世界中を旅し、人々と暮らしぶりを見てきた友人が言っていた。

「おそらく、デンマークは世界でも一番暮らしやすい国じゃないですか」

それは、教育のためだと思う。子どもたちを、自分自身と社会を信頼し、知恵を出し合って生きていけるように育てているのだと思う。

なお、国ではなく親に教育権があるというのは、欧米諸国では常識である。だから、公立学校の教育に問題があっても、親がなんとか別の教育を手配できるのである。

(拙著「変えよう!日本の学校システム」からの引用です)

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